7/28/2012

コーヒーの酸

お客様のお好みを伺うと、最も多いのが「酸が嫌い」というご意見です。
初めて当店にお越しいただいたお客様全体の、なんと90%以上ものお客様がそうおっしゃいます。

しかし「酸」は、ボディとならびコーヒーで最も大切な要素のひとつです。
SCAA(米国スペシャルティコーヒー協会)のカッピング・フォームにも、評価基準の重要なポイントとなっております。

じつは嫌いと思っていらっしゃる大半のかたの酸は、コーヒーの酸ではありません。
コーヒーは農作物のため、日が経つにつれ必ず劣化します。熟成して決して良くなるものではありません。

赤道直下より船で数十日かけて(しかもコンテナの中はサウナ状態です…)輸送すれば、日本に到着する多くの生豆は劣化しています。
またコーヒーは焙煎すると、そこから急激に酸化が進みます。
つまり輸送状態の悪い豆や、焙煎して日が経っている豆、そして保存の悪い豆は、酸化が進んだ独特の「すっぱい」味を感じます。
この味をコーヒーの酸と勘違いしてしまうのは、あまりにももったいないことです。

当店のコーヒー豆は、リーファー・コンテナ(温度調節可能のコンテナ)やバキューム・パック(真空パック)での輸送などを行い、可能なかぎり劣化を防ぐよう努めています。
また当店は必要量を必ず毎日焙煎し、常に新鮮な状態でお客様のお手元にお届けするよう、心がけております。

コーヒー(精製前)は果実です。
果実には魅力的な酸をたっぷり感じることができます。
そしてコーヒーの酸は、品種や精製、生産地などによって異なる個性を持ち、それぞれに複雑な香味の種類があるのです。

たとえばオレンジ、レモン、グレープフルーツなどの、日本人にとてもなじみのある「柑橘」の酸。
アプリコット、ピーチ、トマトなどの「完熟」の酸、ブルーベリー、ラズベリー、イチゴなどの「ベリー系」の酸、ヨーグルトのような酸。そんなさまざまな「酸」を、状態の良いスペシャルティコーヒーからは存分に味わうことができるのです。

これらは決して「酸化」による、あの胃がもたれるような酸ではありません。
コーヒーが本来持っているフレッシュでフルーティーな酸を、当店でぜひお愉しみいただければ幸いです。